そして、早速授業が始まった。
始まった、そう。
始まってしまったのだ。
「で、ここは公式を使うんだが、ここで応用して……」
…わからぬ。
ちんぷんかんぷんすぎる。
なに、公式って。意味わかんない記号出てくるし。
ギリシャ文字だっけ?そもそもギリシャってどこ?
そんな的はずれなことを少しでも考えたら、まあ大変。
知らない間に知らない言葉が出てきてる。
複素数?ナニソレオイシイノ?
聞く限りとっても不味そうだけど。
「じゃあ練習問題、結野、いけるか?」
「いけないです!!!」
「そんな自信満々に言わなくても」
「無理です!!!!」
「…………」
ドラちゃんが苦笑した。
新年早々とかそういうの関係ない、私はいつもこうだ。
「できなくてもいいからやってみろ」
「1586!」
「記号選択問題だぞ」
「オ!」
「ウまで」
「ア!」
「残念、イだ」
「あうっ」
3分の1すら当たらない私の悲運よ...。
いやそもそも理解すれば勘で言わなくていいんだけどなあ...。
でもそれはできるわけないし。
先が思いやられる、と私は項垂れた。
すると。
「ここ、マイナス忘れてる」
「え?」
なんとか解こうとした痕跡、でも意味がわからずぐちゃぐちゃになった数式。
そこにスッと伸びてきた、長い指。
その指はちょっとゴツゴツしているが美しい。
そして、それは私の数式の違う点を的確に指さしていた。
「なるほど!じゃあこうなる?」
「いや、その数式の形だったら違う公式の方がいい」
「わー……!」
どんどん解けていく、どんどん理解していく。
ドラちゃんが授業を進める中、レイくんが私に噛み砕いて教えてくれる。
わかりやすい!!
「結野、問5解けたか?」
「いけた!」
なんてこと。私が数学に躓かないなんて!
とっても嬉しくなりつつ、私はレイくんに笑いかけた。
「レイくん、ほんっとにありがとう!!」
「……ん。ほら、次、また聞き逃すよ」
最初は冷淡なのかなと思っていた。
でも違う、ちょっと周りへの興味が薄いだけ。
転びそうになったら助けてくれるし、こうして勉強教えてくれるし。
優しい紳士くんなんだね。
またひとつ、お隣さんのことを知れた私は、ニコニコしながらドラちゃんの解説に耳を傾けた。



