【短】追放された姫は一匹オオカミと手を結ぶ



えへへ、と笑う仁科さんに、ほおがじゅわりと熱くなる。

ちらりと観客を見ると、ほおを赤くして、きらきらした目で私を見ている人がたくさんいて、鐘を突いたみたいに、心臓がどくんと音を立てた。


…変、って言われないんだ。




「…仁科さんほどじゃないよ。仁科さんって本当にかわいいから。そのドレスも似合うと思ってた」




にこりと笑って言うと、仁科さんは「ありがとう」とうれしそうにほおをゆるめる。




「でも、桃って呼んで欲しいな」


「う、うん…わかった、桃。…私も、呼び捨てでいいよ?」


「本当?うれしい!…二葉ちゃん」




“呼び捨て”…まぁ、いっか。

ピンク色の瞳を細めて笑う顔を見たら、どうでもよくなって私も笑い返す。