【短】追放された姫は一匹オオカミと手を結ぶ

「なにって、当然のことしてるだけだけど?思い当たる節はあるでしょ?もう一発くらい殴ってもいいかな」




舞台のほうからとつぜん聞こえてきた声は、赤史(あかし)とレン先輩のもの。

どうなってるのか、見えないけど…この内容、もしかして…報復、してくれたの?


じーんと胸が温かくなって、でもドキドキもして、わけがわからないのに、自然とほおがゆるんでいた。


早く、着替えようっ。




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かわいい女性歌手の、ポップな曲が流れる。

向かいの舞台袖にいる仁科(にしな)さんと目を合わせて、私はうなずいた。

同時に一歩踏み出して、舞台の上に出る。




「「「わぁっ!」」」




重なる声の多さにおどろいて、横目にちらっと投票人兼観客を見ると、女子も男子も入り混じって100人くらいはいそうだった。

歩くたびに、ほおをなでる空気を感じる。


これだけの人が、私の素顔を…。