【短】追放された姫は一匹オオカミと手を結ぶ

レン先輩は、私のマスクを片手で持って、ひらひらとふる。




「こんなものじゃ抑えきれない魅力であふれてるから。二葉ちゃんのかわいい笑顔をさえぎらずに見せれば、みんな…きみのとりこになる」


「…!レン、先輩…」


「うん」




応えるようにうなずきながら、レン先輩はやわらかく目尻を垂らして笑った。

とろけるような甘い笑顔に、じゅわりと、顔が熱くなる。

いまは、ほおをかくしてくれるものなんてないのに。


あわてて、両手を使ってほおをかくすと、レン先輩は私のスカートの上にマスクを置いた。




「どうするかは、二葉ちゃんに任せる。俺は二葉ちゃんが笑えるように、一番うしろで一悟(いちご)さんの物まねをしておくよ」