【短】追放された姫は一匹オオカミと手を結ぶ



みんな、やさしいな。

一度は背中を向けられちゃったけど、こうやって力を貸してくれる。

いまなら、まだ間に合うよね。


Cometを…水成(すいせい)中を、守れるよね。



先輩と別れたあと、私はよし、と気合を入れて、次は1年生だ、と階段を下りていった。




「二葉ちゃん!」


(ゆかり)くん…」




下の階から声をかけられて、足を止める。

私を見上げているのは、赤史と仲がいいから、いままで声をかけなかった紫くん。

紫くんは一歩踏み出して、紫色の垂れ目を私に向けた。




「ボクも、二葉ちゃんのほうにつくよ」


「でも…そんなことしたら、裏切り者だって言われちゃうよ」


「いいんだ。ボク、二葉ちゃんが本当に辛いとき、守ってあげられなかった…だから、今度はちゃんと力になりたい」




真剣な目で見つめられて、息を飲む。

私は視線を落として…「わかった」とつぶやいた。