【短】追放された姫は一匹オオカミと手を結ぶ



「二葉…!?」


「気安く呼ばないでもらえる?二葉ちゃんはおまえの姫じゃないんだから」


「レン先輩…」




レン先輩は扉に手をつくのをやめて、私の手を握る。

ドキッと心臓が跳ねた私を、赤史の視線からさえぎるように背中へとかばってくれた。


赤史と仁科さんにケンカを売ろう、っていうときなのに、私、ちがう意味でドキドキしてる…!


マスクをつまみ上げて、熱いほおをかくす。




「二葉さん…」




名前を呼ばれて視線を向けると、仁科さんと目が合ったけど、気まずくてすぐにそらした。




「そうか…二葉、おまえ、姫にもどりたいからって適当なやつにこび売ったんだろ」


「!」




なにその言い方、とむかついた直後、ガンッと大きな音がする。

びっくりしてまえを見ると、レン先輩の足が赤史の机をよこに押し出していた。


蹴飛(けと)ばした…の?