「あ?」


「あ、はい…Cometの姫は、たぶんわたしのことです」




ざわざわした教室にノックの音がひびいて、顔を上げる。

見ると、教室のまえ、開きっぱなしの扉のよこに、レン先輩が立っていた。


…来た。




「あ、君たち?や~、近くにいてよかった」




レン先輩はよこの扉に、頭のたかさまで上げた手をひっかけながら、にっこり笑う。

教室の中に残っていたクラスメイトは「なになに?」とくちぐちにうわさばなしを始めた。




「なんだ、おまえ?」


「はじめまして。俺これでもCometの一員でさ、3年の金原(きんばら)レンって言うんだけど」


「金原先輩…こんにちは」


「はい、こんにちは。かわいい笑顔をありがとう。…ところで、総長?“下剋上(げこくじょう)”宣言させてもらっていいかな」




ざわっと、教室がいっそうさわがしくなる。

対角線にいる私からは見えないけど、赤史(あかし)もきっと眉根を寄せて険しい顔をしてるんだろうな。