笑顔を作ったまま、ほおをなぞると、やっぱり口のよこにひっこんだところがあった。

変な顔を見せている自覚を持つと、耐えられなくなってうつむく。




「これが、私の一番見せたくないものです…」




あのころから、コンプレックスになったもの。

世間一般では、“えくぼ”と呼ばれているそれが、私の体のなかで一番大きらいな場所。


マスクを握りしめて、ぎゅっと目をつむると、ぽん、と頭をなでられた。




「わかった、よくがんばったね。約束どおり、二葉ちゃんを姫にしてあげる」


「…!ほ、本当、ですか…!?」


「うん。男子は女の子の涙に弱いけど、女の子のかわいい笑顔には、もっと弱いんだ」




金原先輩は眉を下げて、ため息をつくように笑う。


かわいいって。

こんな、変な笑顔を見ても言ってくれるんだ。


…金原先輩って、やさしいな。