「それでもちゃんと、姫としてやっていく覚悟があるなら…二葉ちゃんが一番見せたくないもの、俺に見せて」
「え…」
「いやなら、このはなしは終わり。まぁ、ふつうに生活できるくらいの状態にはしてあげる」
教室の奥、窓の外の空へと視線を向けて、金原先輩は軽く言う。
…助けてくれようと、してるんだ。
一番、見せたくないもの…。
私はマスクに触れて、うつむいた。
「…わかりました」
ふぅ、と息を吐いて、マスクを取る。
金原先輩に顔を向けると、茶色の瞳が私に向けられた。
こわばる体に力を入れて、にこっと、笑顔を作る。
金原先輩の瞳が、ぱちりとまばたきをした。
「私の笑顔、変ですよね…?小学5年生のとき、通りすがりの男子に言われたんです。ほっぺに穴が空いてるって」