【短】追放された姫は一匹オオカミと手を結ぶ



やさしい声。

ぜんぜん知らない人なのに、胸がきゅっと()め付けられて、私は吐き出すように言っていた。




「っ…私、もう、限界で…!」


「…そっか。なにがあったの?」




ゆっくりと頭をなでた手が離れて、金原先輩があぐらをかく。

ひざにひじを乗せて、両手の指先を絡めて。




「…赤史が、仁科さんを姫にするって言ったんです…!私が強く言っちゃったせいで、仁科さん、泣いちゃったみたいで…」


「うん」


「二度と視界に入るなって…みんなにも、無視されるようになって…今日は、机、廊下に出されたりもしたし…」




思い出して、両手で顔をおおう。




「さっき…1年生を、助けたんです…でも…いまの私に助けられてもうれしくないって…それが、一番辛かった…!」


「そっか…ひどいこと言うやつもいるねぇ」