【短】追放された姫は一匹オオカミと手を結ぶ



「わかんないよ…っ!」




文句を言って、あふれて止まらない涙でほおをぬらす。

顔をおおう両手の中に、「あぁ…っ」と泣き声がもれた。


――もうダメだ、私…。




カラカラ…


「おっと。そんなところでどうしたの?」


「…金原(きんばら)、先輩…」




私のうしろの扉を開けたのは、きっとこの教室で出会ったあの人。

涙にぬれた顔でふり返ると、茶色の瞳はぱちりとまばたきをして、教室のなかに移動した。

金原先輩は扉を閉めながら、私のよこにしゃがみこむ。




「マスク、ぬれちゃうよ。取ったら?」




ながい指が私のマスクに向かって伸びてきて、とっさに腕を押し返した。




「…ごめん」


「いえ…」




私こそ失礼なことをしちゃった、と顔をそむける。

こまったように息を吐いた金原先輩は、そっと私の頭をなでた。




「どうしたの?」