【短】追放された姫は一匹オオカミと手を結ぶ

「…せ、先輩はもう、姫でもなんでもないんですよね?そんな人に言われたことなんか信じられませんっ」


「え…」





浮かべた笑顔がこわばる。

絡まれていた男子は下を向いて体をふるわせていた。


“ありがとう”って、いつもならホッとしたような笑顔が返ってくるはずなのに。




「Cometの総長ににらまれてる人に口を出されて、あとでなにをされるか…っ。先輩に助けられてもぜんぜんうれしくないですっ」


「!」




そんな…。

私がしたのは、よけいなことだったの?




「失礼します!」


「…っ」




階段を駆け下りていく男子の背中を、頭がまっしろになったまま見つめる。


…あぁ、いまのが一番効いた…。

…そっか。


いまの私じゃ、助けを必要としてる人を助けることもできないんだ…。