こんな空気になってから、教室よりせまい密室であるトイレには行きづらくなって、私は1階の職員用トイレをよく使うようになった。

洗った手をハンカチで拭きながら廊下に出て、上階の音が聞こえてくる階段をゆっくり上がると、上からはなし声が聞こえてくる。




「今日集会あるんだってよ。なんだろうな?」


「あ、それ聞いたぜ。姫の提案で球技大会やるって」


「マジかよ!最高だな~、まえの姫じゃ考えられねー!」


「…」




また、そういう話。

私だってレクリエーションの提案はしてたよ…今年は赤史(あかし)にふり回されて、そこまで手が回ってなかったけど。


…なんて、いま考えても、か。


私はうつむいて目をつむり、手すりに触れながら2階を通り抜けた。