【短】追放された姫は一匹オオカミと手を結ぶ

たしか、その人の名前は…。




「あなた、金原(きんばら)レンさんですか?2年…いや、いまは3年の」


「そうだよ。さすがお姫さま、知ってるんだ。…あぁ、元お姫さまか」


「…」




お兄ちゃん、その人のこと“腕が立つ一匹オオカミ”って言ってたはずなんだけど。

…この人が?


もっと愛想のない、全方位にケンカを売ってるような人かと思ってた。


私は想像とのギャップにぱちぱちとまばたきをして、姿勢を正した。




「はじめまして、私は銀河(ぎんが)二葉(ふたば)です。あいさつが遅くなってごめんなさい。兄からおはなしは聞いていました」


「…」




正座でぺこりと頭を下げると、金原先輩はよこになったまま目を開けて私を見る。

姫としてあいさつしたつもりだったけど、そういえば私、もう姫じゃないんだよね…意味なかったかも。

もうこういうのもやめないとな、とみんなの冷めた視線を思い出して胸が重くなる。