手の甲でぐいっと涙をぬぐって、うかがうように金髪の男子を見た。

見覚えはないけど、この口ぶり、Comet(コメット)のメンバー…?




「あなたこそ、知らないの?私はもう姫じゃなくなったって」




自分で言って、胸がいたむ。




「へぇ、それはおどろいた。…じゃあ、丁重(ていちょう)に扱う必要はないわけだ」




金髪の男子は、ぱちぱちとまばたきをして、本当におどろいているようす。

なのに、くぁ、とあくびをして体をよこたえ始めた。




「1人で泣きたいなら落ちつくまでここにいていいよ、俺は寝るから」


「えっ?」




ちょっと、と思っているあいだに、金髪の男子は頭のうしろで組んだ腕を枕にして、目をつむる。

その顔がまたきれいだな、なんて思っているあいだも、金髪の男子がそれ以上しゃべることはなくて。


…本当に、寝る気なの?

うそでしょ…。