「否定したって、だれかが傷つくだけだよ…わたし、そんなのいやだな…」
「それとこれとは別――!」
「――いいかげんにしろよ」
的外れな言葉に、ぎゅっと拳を握って力むと、赤史がさえぎるように、仁科さんの肩を抱いた。
仁科さんの瞳が赤史に向く。
赤史は、眉間にしわを寄せて、見下すように私をにらんだ。
「まえからうるさいと思ってたんだ。俺も我慢の限界。ぐちぐち言うお前なんかじゃなくて、桃を姫にする」
「え…?」
「その顔に免じて我慢してたけど、桃っていう性格もいい女がいるんだ。お前を姫にしておく理由はない。…二度と俺の視界に入るな」
私、いま、なんて言われたの…?
仁科さんを、姫にする…?
二度と視界に入るなって、私、そこまできらわれるようなことした…?



