【短】追放された姫は一匹オオカミと手を結ぶ



「否定したって、だれかが傷つくだけだよ…わたし、そんなのいやだな…」


「それとこれとは別――!」


「――いいかげんにしろよ」




的外れな言葉に、ぎゅっと拳を握って(りき)むと、赤史がさえぎるように、仁科さんの肩を抱いた。

仁科さんの瞳が赤史に向く。


赤史は、眉間にしわを寄せて、見下すように私をにらんだ。




「まえからうるさいと思ってたんだ。俺も我慢の限界。ぐちぐち言うお前なんかじゃなくて、桃を姫にする」


「え…?」


「その顔に免じて我慢してたけど、桃っていう性格もいい女がいるんだ。お前を姫にしておく理由はない。…二度と俺の視界に入るな」




私、いま、なんて言われたの…?

仁科さんを、姫にする…?

二度と視界に入るなって、私、そこまできらわれるようなことした…?