【短】追放された姫は一匹オオカミと手を結ぶ



転校生の仁科さんは目をかがやかせて、満面の笑みを浮かべた。

赤史は絶対、ドッジボールをやる口実(こうじつ)を作っただけだけど。




「おう。俺のチームに入れてやろうか?」




なんて、調子のいいことを言っている。




「いいの…!?ありがとう、えっと…お名前は?」


「天間赤史。赤史でいいぜ、桃」




にっこり笑って、赤史は横目にちらっと私を見る。

…なに?




「うん、赤史くん!」




視線の意図がわからないまま、点呼を受けて、連絡事項を聞いて…。

ホームルームの終わりを告げるチャイムが鳴ると、みんなが一斉に席を立って、わいわいと校庭に向かった。

先頭を行くのは、赤史と、終始うれしそうに笑っている仁科さん。


私はおくれて席を立ちながら、やれやれとため息をついた。

仁科さんが赤史に、わるい影響を受けないといいけど。