三ツ谷君は本当に、私にどうしてほしいの。

 彼は分かってるはずだ。私のその言葉は、単なるはったりだって。

 でも、本気にしているように見える。

 ……彼の思惑が、全く分からない。

「私……もう、行くから。」

 今朝のように距離を取ろうと、彼の横を通り過ぎる。

 逃げてばっかりだ、私。

 心のどこかでそう思うも立ち止まる気はなくて、ぎゅっと拳に力を入れる。

「もし俺の話を聞いてくれるなら、放課後教室に残ってて。」

 まだ言いたい事はあるから。

 そう小声で付け加えられた言葉は一瞬だけ、ほんの一瞬だけ私の心を揺るがせる。

 けれどもこの時の私は三ツ谷君から一刻も離れたくて、彼の言葉に反応する事無く去った。