何をしても楽しくないし、何をしても何にもならない。

 言うなれば、生きる事が億劫になり始めている。

 かといって、死にたくない。死ぬのは苦しいし、それだけのリスクが課せられるし。

 だけど、例えばの話。

「私が消えるように死にたい、って言ったら……三ツ谷君はどうするの?」

 おとぎ話の、人魚姫のように。

 泡となって消えられたら、きっと苦しくはないだろう。

 もしそんな事ができるなら、三ツ谷君は何を思うだろう?

 そんな疑問が脳裏をよぎって、私は彼を見据えた。

 まるで、彼を試すように。

 私を止めるのか、それともまた綺麗事を言うのか。

「……馬鹿だね。」

 ふっと挑発気味の笑みを浮かべた私に聞こえた、そんな言葉。

 それは煽るようなものでも何でもなくて、必死に絞り出したような声だった。

 ……その時、はっとした。

 三ツ谷君は、一体何を思っているのだろうか。

「俺は君に、いなくなってほしくない。馬鹿な事を言わないで。」

 ……――どうして彼はこんなにも、苦しそうに顔を歪めるのだろう。