だけども彼はまだ、私を解放してくれないようで。

 凛とした声で、静かに引き止められた。

 人と関わる事は得意じゃない。

 しかも相手は人気者の三ツ谷君、ひょんなきっかけからある事ない事噂にされそうで怖い。

「どうして、私に関わるの。」

「彩海さんが可哀想だから。」

「……かわい、そう?」

「うん、今の俺には彩海さんが可哀想に見えて仕方がないの。」

 ……そんな、わけ。

 三ツ谷君は何を言ってるんだ。私に限って、可哀想だなんて。

「私は、可哀想なんかじゃない。」

 可哀想、だなんて思ってても言わないで。惨めになるだけだから。

 いきなり何を言い出すかと思えば、言われたのはあまりにも失礼な言葉で。

 思わずムキになって答えてしまった。

「三ツ谷君が何を思って私を可哀想って言ったのかは分からないけど、そんな事言わないでほしい。私はそんな言葉で言えるほど、哀れな人間じゃないもの。」

 震える。手が、足が、体全体が……そして、感情が震える。

 平常心を保てる自信がなくて、私は走って三ツ谷君から距離を取った。