「どうしてここに居るの? 学校もう始まるよ。」

「俺は気分。……彩海さんは?」

「……私も、気分。」

 三ツ谷君とは、あまり話した事がない。

 だから仲が良いわけでもないし、本来ならすぐに振り切って学校へと向かう。

 なのにこの時は、三ツ谷君に声をかけられたから無理だった。

「俺には、彩海さんは学校に行くのが辛そうに見えるけど。」

「……だったら、何だって言うの。」

「いや、別に。……でも学校、行きたくないでしょ。」

 三ツ谷君は、人の感情に敏感なのだろうか。

 それか、心が読めるのか。

 そんな事を考えてしまうくらいには、私は動揺していた。

 どうして、分かったのか。どうしてバレたのか。

 昔からポーカーフェイスが得意なはずなのに、三ツ谷君の前ではまるでものとしないように見破られた。

 でも決して隙を見せないよう、私は毅然とした態度でいた。

「そんな事思ってない。今日はたまたま遅くなっただけで……私、もう行くから。」

「待って。」

 三ツ谷君の隣を通り過ぎようとして、早足で進む。