気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす


彼を見たのは、4年前の社交会が最後。あの頃から既に美しかった。

表に滅多に顔を出さない両親の代わりに一人で出席し、会場をざわつかせていたのを覚えている。


悪党一家の御曹司というだけでも目立つのに、当時まだ二十歳にも満たない若さ、さらに浮世離れした美貌で、良くも悪くも会場内で明らかに浮いていた。


あの頃から変わらない美しさに、今は艷やかな色気と底知れぬ冷たさが加わり、言葉では表せない魅惑的なオーラが揺らめいている。



どうして……彼がここに?

この店にお気に入りのキャストでもいるのかな、なんて考えた直後、距離を大きく詰められたことでハッと現実に返った。



「お前名前は?」

「………、」


当然、本名を名乗るわけにはいかない。
かと言って偽名を使ったところでお店に入ればすぐにバレてしまうかも。


「……ノア、です」


嘘は……ついてない。

私のここでの名前はノア。


身バレ防止のために本名とは似つかないものにすべきだったんだけど、
面接の際きらりさんにとびきりの笑顔で『源氏名はノアたんでいこう!』と提案されて断ることができなかった。



「へーえ」


本名から二文字をとっただけの『ノア』という響きにピンときた様子もなさそうで安堵する。