私が落ち込まないように、この場に全く関係ないお世辞で励ましてくれるなんて、きらりさんには本当に頭があがらない。
「じゃあ、今日はラストまでノーメガネのノアたんでご給仕よろしくねっ」
「……はい」
これまでに知り合いがお店に来たことはないし、大丈夫……だよね。
メガネがなく心もとなかったり、さっき転んだ原因がわからずモヤモヤしたり。
そのあとも、なんだかずっと気分が晴れないまま。
「ノアたんが美少女だって僕初めから見抜いてたよ! また会いにくるねっ!」
挙げ句の果て、大沢さんにまで気を使わせてしまった自分に嫌気が差した。
そして
──バータイムが始まる18時。
大沢さんを扉の外までお見送りしたあと、入れ替わるように誰かが前に立つ気配がして。
「お帰りなさいませ、旦那さ───、」
反射的にあいさつが口をついて出た直後、
凍りつく。



