気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす


NO.1キャストのラムさんと通路ですれ違ったタイミングで、私は何かにつまずいた。


あれ?

私はちゃんと足元を確認しながら歩いてて、通路には何も落ちてなかったはずだけど……。

なんて考えているうちに体はバランスを崩し。


「ひゃ……っ」


――ガチャン!

派手な音を立て、グラスと一緒に転倒してしまう。


うぅ、痛い……。

身を起こした直後、散らばった破片を見て、さあっと血の気が引いた。



「きらり店長ぉ〜、ノアちゃんがドリンクとグラスだめにしましたあ〜」


ラムさんがカウンターのほうへ声を掛けたことでさらに焦りが募る。

お客様たちも、何が起こったんだと騒ぎ始めている。


まずは雑巾で床を拭いて、それからグラスの破片を集めないと。

それからスタッフさんに謝って、ドリンクを作り直してもらって……。


痛む膝を押さえながら立ち上がろうとしたとき、パキ、と妙な音がした。


「あっごめんノアちゃん、踏んじゃった」