オープンから3ヶ月が経ち、ようやく伊織と美紅も東京で落ち着いた毎日を送れるようになった。

宿は連日ほぼ満室。
本社に送られてくる業務報告や売り上げ、客層やお客様アンケートを分析し、資料にまとめて会議を行う。

「滑り出しとしては順調と言えるでしょう。あとはいかに飽きられずにリピーターを増やし、新規の顧客も獲得していくか。常にアンテナを張って改善していきましょう」

経営戦略部の意見に、皆も頷く。

「すでにリピーターも何組かいらっしゃいます。毎回同じおもてなしではなく、例えばお部屋でゆっくりされたい方へは、お茶の時間に和菓子をお出しするサービスや、お部屋でのマッサージなどもご提案しましょう」
「季節ごとに宿を訪れる楽しみも増やしたいですね。そういったアイデアも考えていければ」

本社の意見と現地スタッフの意見をまとめつつ、皆で知恵を絞って宿は魅力を増す。

5ヶ月経つ頃には、週末の予約は1年先まで取れない状態となった。