紅色に染まる頃

いつの間にか12月に入り、美紅は毎日のように本堂リゾートの本社に赴いて、副社長室で伊織と話し合っていた。

伊織の秘書の須賀が、車で送り迎えをしてくれる。

「毎日ありがとうございます、須賀さん」

いつものように会社に向かう車の中で、美紅は須賀に話しかけた。

「いいえ。小笠原様が来てくださってから、副社長は見違える程仕事に打ち込んでいらっしゃいます。今までは、いつもどこか悩んでいらした様子でしたが、すっかり頼もしくなられて。小笠原様には本当に感謝しております」
「いえ、そんな。わたくしは何も……」
「これからもどうぞよろしくお願い致します」
「こちらこそ、どうぞよろしくお願い致します」

バックミラー越しに微笑み合うと、ふと須賀が思い出したように口を開いた。

「そう言えば、本堂の奥様が小笠原様にお会いしたいと申しておりました。ご都合がよろしければ、夕食にお招きしたいと」
「まあ、そうなのですね」
「はい。申し訳ないのですが、ご予定を調整して頂けませんでしょうか?」
「ええ。いつでも大丈夫ですわ」
「本当ですか?!ありがとうございます。早速申し伝えます」

すると、ぜひ明日にでも、とお返事があり、美紅は翌日仕事を終えると、伊織と一緒に屋敷に向かうことになった。