紅色に染まる頃

新年を迎え、二人は揃って両家に挨拶に行く。
木崎社長宅と『京あやめ』にも、改めて写真を持ってお礼に伺った。

時の宿の計画も順調。
日本各地に、それぞれの土地の良さを活かした時の宿が少しずつ増えていく予定だった。

そんな日が続く中、仕事が少し落ち着くのを見計らって二人は新婚旅行に出掛けた。

行き先は京都。

「仕事で散々行ったのに?やれやれ、二人ともどこまで仕事人間なんだか」

木崎社長は呆れ気味にそう言ったが、美紅も伊織もじっくりと京都を見て回りたかった。

時の宿に1泊してから、あちこちの名所を巡り色々な宿に泊まる。

新たな発見や感動もあり、充分に古都の良さを満喫して帰路についた。

季節は移り、ポカポカと暖かくなり始めた4月の初め。
美紅はマンションのウッドデッキから、満開の桜の花を眺めていた。

「美紅、身体が冷えるよ」

そう言って伊織がストールを肩に掛けてくれる。

「ありがとう」

二人は並んで美しい桜に魅入った。

「来年のお花見は、三人で楽しめるな」
「ええ、そうですね」

伊織の言葉に、美紅はそっと自分のお腹に手を当てる。

小さく息づく新たな生命。
出産予定日は11月の初旬だった。

「どんな子が生まれてくるんだろう。君に似て勇ましいのかな?」
「勇ましい?!私の印象、まずはそれですか?」

美紅がムッとすると、伊織は笑う。

「それはもう。だって脈々と受け継がれるDNAだもん。美紅の血を引くなら無敵だよ。あ、優しくて美形の子でもあるかな」
「そんな取ってつけたように……」

むくれる美紅の肩を伊織が抱き寄せる。

「最高に可愛くて最強にたくましい。そんな俺達の子を、俺は最上に幸せにするよ」

ふふっと美紅はようやく伊織に微笑む。

「はい。私も必ず大切に守っていきます。旧華族ではなく、私達が作っていく幸せな本当の家族を」

伊織は微笑んで頷くと、そっと美紅の頬に口づけた。

綺麗な桜を見ながら、幸せが舞い降りて来る日を二人は心穏やかに待ち望む。

この庭が、紅葉で紅色に染まる頃。
大切な家族が増える、輝くように幸せなその日のその瞬間を……

(完)