会場の扉が開き、二人がライトの中に歩み出た途端、おおーっとどよめきが起こった。

「うわー、素敵!絵になるわ」
「まさに美男美女。お似合いのカップルですな」

皆の言葉を聞きながら、美紅は恥ずかしさに身体を固くする。

(ええ?ドレスに着替えただけなのに…)

ぎこちなく歩く美紅の隣で、なぜだか伊織は得意気に皆に微笑みかけている。

「やっぱり美紅のドレス姿は、誰がどう見ても綺麗なんだよ。それはそうだろう、美紅の美しさは格別だからな。こんなに素敵な花嫁が俺の奥さんに…」
「伊織さん!もう黙って!」

伊織の呟きを周りの人に聞かれそうになり、美紅はビシッと牽制する。

伊織はちょっと肩をすくめると、続きは二人切りになってからね、と美紅の耳元でささやいた。

美紅は耳まで真っ赤になる。
なんとか高砂にたどり着いてホッとしながらお辞儀をすると、司会者がマイクを手に話し出した。

「それではこれより、新郎新婦のお二人が指輪の交換を行います。後方のお席の方も、どうぞお近くまでお越しください」

(ひょえー、そうだった。指輪の交換)

神前式では行わなかった指輪の交換を、ドレスに着替えてから披露宴で行うことになっていたのだ。

司会者の呼びかけに、シャッターチャンスとばかりに皆が近くに来てカメラを構える。

美紅は介添えのスタッフにブーケと手袋を預けると、伊織と向かい合った。
二人の前にリングピローが置かれる。

「それではまず新郎から新婦へ、愛の証の指輪が贈られます」

美紅が右手を軽く添えながら左手を差し出すと、伊織はその手を下からそっとすくい上げた。

「美紅。愛する君にこの指輪を贈ります。必ず君を幸せにする誓いと共に」

そう言ってゆっくりと輝く指輪を美紅の薬指にはめる。

美紅は周りの視線も忘れ、感動で胸を詰まらせた。

「それでは次に新婦から新郎へも、愛の証の指輪が贈られます」

美紅はリングピローから指輪を取ると、伊織の左手に触れて顔を上げた。

「伊織さん。この指輪は私の想いそのものです。どんな時もあなたのそばで、一生あなただけを想い続けます」

伊織は優しく微笑んで頷く。
その薬指に、美紅はゆっくりと指輪をはめた。
そして伊織を見上げると、涙で潤んだ瞳で可憐に微笑む。

伊織は込み上げる愛しさに胸を切なくさせながら、美紅の肩を抱き寄せて優しくキスをした。

会場から拍手が湧き起こり、いつまでも二人を温かく祝福していた。