紅色に染まる頃

「はあ、とっても素敵な結婚式だったわね」
「本当に。日本のスタイル素晴らしいわ!」

家族での集合写真も撮り終えて控え室に戻ると、エレナとエレナの母が感激の面持ちでうっとりしていた。
二人とも、神前式に参列するのは初めてだったようだ。

「木崎社長、奥様、本日も本当にありがとうございます」

伊織と美紅は改めて二人に頭を下げる。

「いやー、私もなかなか貴重な経験をさせてもらったよ」
「ええ、身が引き締まりましたわ。塁くんも、とってもいい子だったわねー」

社長夫人は、塁の頭を撫でながら微笑みかける。
また会えたことが嬉しいようで、式が始まる前にも塁を抱っこして優しく話しかけていた。

「皆様も、ご列席頂き本当にありがとうございました」

伊織と美紅がもう一度皆に礼を言うと、おめでとう!と拍手が起こる。

そんな中、スタッフが桜湯と和菓子を皆に配り始めた。

「あら?この和菓子は……」

美紅が首を傾げると、ベテランらしきスタッフが口を開いた。

「先程、年輩の男性がこちらに届けられたのです。お二人のお祝いにとおっしゃって。お名前をお聞きしましたが、そのまま帰ってしまわれました」

え……?と思わず美紅は呟く。
だが、名乗らなくとも和菓子を見れば一目瞭然。
これはまごうことなき『京あやめ』の和菓子。

「おじいさん、私達の為に……」

そう言って美紅は目を潤ませた。

「ああ。今日この和菓子が食べられるなんて、本当にありがたい。改めてお礼に伺おう」
「はい」

美紅は幸せな気持ちとともに、和菓子をじっくり味わった。