紅色に染まる頃

「まあ、なんて素敵なの……」

食事のあとにブライダルコーナーに立ち寄ると、ガラスのショーケースにはずらりと純白のウェディングドレスが並んでいた。

「せっかくですので、ご試着されませんか?」

物腰の柔らかい女性スタッフが美紅に微笑みかける。

「えっ、今からですか?」
「はい。本日は他のご予約はもう入っておりませんので、ゆっくりとお好きなドレスをご試着頂けます。こちらにあるドレスをご参考に、セミオーダーやフルオーダーも承れます」
「オ、オーダーですか?」

突然の話に美紅がついていけずにいると、隣で伊織がカタログを覗き込んだ。

「美紅、これはどう?」

伊織が指差したのは、鎖骨が綺麗に見えるオフショルダーのドレス。
ロールカラーになっていて、ウエストからバックにかけては大ぶりのフリルが波打つように美しい、クラシカルな雰囲気だ。

「こちらは最高級ミカドシルクを使用しておりまして、張りと光沢が美しく、気品溢れるドレスでございます。きっとお似合いになりますわ。どうぞ、一度お召しになってみてください」

そう言って手際良く準備をしたスタッフが、美紅を試着室へと案内する。

心の準備が出来ないうちに、美紅は言われるがままドレスを試着した。

「まあ、なんてお美しい」

スタッフの言葉に、美紅は気恥ずかしくなり首を振る。

「いえ、そんな。ドレスが美しいだけですわ」
「いいえ。このドレスは着こなすのが難しいのですが、とてもよくお似合いです。お嬢様の細くて長い首筋と綺麗なデコルテ、それに、何でしょう……。内面から輝くような気品に溢れていらして、本当にうっとりしてしまいます。さあ、早く副社長にもご覧頂きましょう」

髪をゆるくアップにまとめ、ネックレスと手袋を着けると、スタッフに手を引かれて美紅は試着室を出た。