紅色に染まる頃

その後は須賀も含めて皆で食事を囲む。
皆、緊張から開放されてワイワイと楽しく料理を味わった。

「まあ、なんて可愛らしいのかしら。お人形さんみたいね」

木崎社長夫人は塁を見るなり、目を細めてうっとりとする。

「よろしければ、抱っこしてくださいませんか?」
「えっ、いいのかしら?」
「ええ、是非」

エレナはにっこり微笑むと、夫人の腕に塁を預けた。

「わあ、なんて柔らかくて温かいの。赤ちゃんってこんなにも尊いのね」

満面の笑みを浮かべていた夫人が、いつの間にか目に涙を溜めている。

「奥様?どうかされましたか?」

エレナが心配そうに声をかけると、夫人は取り繕うように慌てて笑った。

「あ、ごめんなさいね。私、こんなに小さな赤ちゃんを抱っこしたことなくて、感動してしまって……」

木崎社長が寄り添うようにそっとその肩に手を置くと、夫人はもう一度泣き笑いの表情になる。

「私達、子どもに恵まれなかったの。何年も病院で不妊治療して、二人で話し合って、結局諦めるしかなくてね」

え……と、美紅もエレナも言葉を失う。

「赤ちゃんって、抱っこしてるだけで心が癒やされるわね。どうもありがとう」

そう言ってエレナの腕に塁を返す。

「またいつでも抱っこしてやってください」
「ええ。次に会える日を楽しみにしています。どうかすくすく大きくなりますように」
「ありがとうございます」

エレナは微笑んで礼を言った。