紅色に染まる頃

次の日は、宮城と秋田を通り、一気に青森まで抜けることにした。

まずは宮城に向かう。
「白石川堤の一目千本桜は、残念ながら今年は既に散ってしまったようだから、仙台に行こうか」
「はい」

美紅は仙台市の三神峯公園に車を走らせた。
市街地を臨めるゆるやかな丘陵地にあり、早咲きや遅咲きなど、満開になる時期が異なる桜が約48種植えられている為、1ヶ月間程お花見を楽しめる。

「染井吉野はもちろん、八重紅枝垂、楊貴妃、白雪、御衣黄まであるのですね!」
「御衣黄って、この黄緑色の花?これも桜なの?」
「ええ。サトザクラの品種の一つで、江戸時代に京都の仁和寺で栽培されたのが始まりだと言われています。花びらが、平安時代の貴族の衣服の『萌黄色』に近いことが名前の由来だそうです」
「ふうん。桜ってピンク色だけじゃないんだね」

様々な種類の桜、約750本を楽しむと、宮城をあとにして秋田県へと向かった。

最初に訪れたのは『角館のシダレザクラ』
仙北市角館の武家屋敷通りの黒板塀に降り注ぐように咲き誇り、見事な景観を醸し出しているその枝垂桜の歴史は古く、佐竹北家二代義明の正室がお興入れの時に持参した3本の苗木が始まりと言われている。
国の天然記念物に指定されているものを初め、樹齢300年以上の老樹など400本余りが咲き誇り、角館町内は薄紅色に染められていた。

次に美紅は、どうしてもここを走りたいと言って南秋田郡大潟村へ向かった。
目指すのは『桜・菜の花ロード』
県道298号線沿い約11kmにわたり、約4,000本の染井吉野、八重桜、紅山桜の桜並木が菜の花と並行して続き、ピンクと黄色の絨毯を敷いたような景観が広がっている。

「まあ、なんて綺麗なの……」

桜と菜の花が織り成すピンクと黄色の鮮やかなコントラスト、そこに黒松の緑色と空の青さも相まって、まるで絵画のような美しい自然の中を、美紅は感激しながら車で走り抜ける。

「不思議な感覚……」
「本当だね。言葉を失ってしまうよ」

時間にすればわずかだったが、この景色と感動は決して忘れられないと二人は思った。