紅色に染まる頃

夕方になり、緑豊かな渓流沿いに佇む宿にチェックインする。

部屋は東山温泉内を流れる清流「湯川」を眼下に望む、展望風呂付きの和洋室だった。

「なんて素敵なの……。伊織さん、見て」

部屋に入るなり、美紅は窓の外に釘付けになる。

渓流、自然の滝、そして豊かな緑の木々が、窓の外いっぱいに広がっていた。

「お部屋の中なのに、まるで自然の中にいるみたい」
「ああ、本当だな」

しばらく部屋でお茶を飲みながら景色を眺めた後、館内を散策することにした。

「美紅、浴衣の貸し出しもやってるよ。せっかくだから着替えたら?」

伊織に言われて、美紅は浴衣を選び始める。

「どれも可愛くて迷っちゃう」
「じゃあ、これは?」

伊織が勧めたのは鮮やかな紅色の浴衣。
美紅は頷いて、早速浴衣に袖を通す。

「うん、やっぱりよく似合う。綺麗だよ、美紅」

伊織に見つめられて、美紅は頬を赤らめてうつむいた。

夕食は湯川の傍らにある水辺のダイニングで頂くことにした。
入り口には篝火が焚かれ、 月明かりが幻想的な夜の風情を醸し出している。

渓流のせせらぎに耳を傾けながら、福島県産の黒毛和牛や会津名物の馬刺しに舌鼓を打った。