紅色に染まる頃

「わあ、桜が満開!」

福島の会津若松市に到着し、車を降りた美紅は目を細めて桜を愛でる。

幕末の世に、最後まで武士の誇りを貫き通した会津藩のシンボル『鶴ヶ城』

2011年に復元された日本で唯一の赤瓦の天守閣に、染井吉野や八重桜、枝垂桜など、約1,000本の桜の調和が見事だ。

武士の時代を、ほぼそのままの姿で今に伝える鶴ヶ城城址公園は、約69,000坪の敷地内に本丸を中心に天守閣、茶室などの建物が再現されている。

「この茶室麟閣は、千利休の子の少庵が会津にかくまわれた際に建てられたと言われている茶室です」
「そうなんだ」

美紅と伊織は、ゆっくりと公園内を見て回った。

真っ白な城壁に赤瓦のコントラストが美しい天守閣。
白虎隊士はどんな想いでこの景色を眺めたのだろうか。

「ならぬことはならぬものです」

美紅は見事に咲き誇る桜を見ながら、会津藩士の子弟、什の掟を締めくくる言葉を呟く。

生まれた時代が違えば、自分の人生も大きく違っていただろう。
そう思うと、歴史の重みが胸に迫り来る。

桜をじっと見つめる美紅の横顔を、伊織もまた黙って見つめていた。