厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています

 サリーが運んできてくれた贅沢な晩餐を部屋で済ませ、食後のコーヒーを楽しんでいると――。

「今夜が初夜になるかもしれません。油断せずに準備いたしましょう」
「ゴホッ……!」

 不意打ちに、口に含んでいたものを吹き出しそうになった。
 涙目になって咳き込むと、「大丈夫ですか」と背中をさすられる。だが言った本人は至って真面目で、こちらの聞き間違いでもないようだ。
 このあと入浴に移り、念入りに清めて磨き上げ、仕上げにはお肌がすべすべになるようクリームを塗り込んでくれるつもりらしい。

(しょ、初夜だなんて、結婚してもいないのに。でも、そういうものなのかしら……。もし陛下が望まれたなら、従わなければ……よね?)

 男女のことはもちろん初めてであるし、詳しくはない。けれど書物などから基礎的な知識は少しは得ている……と思う。
 これは使命だと、愛妾としての勤めなのだと思おうとするが、簡単に片づけられるものではなかった。フランは幼い頃からずっと、恋愛結婚を夢見てきたのだ。