「わかっているとは思うが、今やマナが枯渇したこの世界で、獣人化の力は珍しいものだ。クリムトは魔術師の末裔で、そういった方面にも詳しい。おまえの能力を明らかにするために、調査に協力してほしいのだ」

 マナ――大地の恵みの力が満ちていた頃は、魔法の使い手も珍しくはなかった。エネルギーとしてのマナは、獣人の変身の原動力にもなっていたといわれている。

(明らかにといっても……私はただの先祖返りなんですが……)

 協力することは簡単だが、調べるとはいったいどのようなことをされるのだろう。
 不安を隠せずにいると、横から穏やかな声がかけられる。

「大丈夫ですよ、痛いことはしませんから。少し、気を見させていただくだけです」

 クリムトはフランの傍らに来て膝をつくと、低いところから柔らかく見つめてきた。
 落ち着いた瞳の色と声音に安心を覚え、小さくうなずくと、にっこりとした微笑みが返ってきた。

「それでは早速、失礼いたします。少しの間、額に手をかざしますね」

 フランを驚かせないよう、ゆっくりと説明しながら事を進めてくれるようだ。