(陛下の部屋の隣って……それは将来、皇妃となるお方のための部屋なのでは……?)

 動揺が伝わったのか、ふと空気が緩み、からかうような声が降ってきた。

「おまえとは、じっくり向き合う必要がありそうだからな」

 言葉に甘さのようなものを感じて、鼓動が早くなる。
 そうして戸惑っている間に、彼は速やかに部屋を出ていってしまった。
 ろくな説明もなく取り残されて、目まぐるしい状況の変化に頭がついていかない。

(どういう意味……? 私はこれから、どうなるの……?)

 ここへ来た本来の使命を思えば、答えは明白だった。母が言っていたように、気まぐれに手折られる愛人にされるのだ。
 皇妃として見初められたなんて、そんなうまい話があるわけがないから、おそらくその程度の扱いに違いない。しかし、ライズは愛人を作って遊ぶような、浮ついた人ではないと思っていたのに――。
 どうしてか胸の奥がツキンと痛んだが、がっかりするのはお門違いだ。

(覚悟を決めなくてはいけないわ……)

 ひとりで寝るには大きすぎる豪華なベッドの真ん中で、フランはこくりと喉を鳴らした。