朝の陽光を肌で感じて、眠りの淵から意識が浮上していく。
 ほどよく弾力のあるベッドスプリング。滑らかな手触りのシーツと、羽根のように軽い毛布。枕は少し硬いけれど、温かくしっかりしていて気持ちがいい。

(朝……起きないと)
 まだ気だるさの残る瞼をゆっくりと持ち上げた。すると、

「……えっ?」

 目の前に誰かが横たわっている。
 それも体温を感じるくらい間近に寄り添って、おまけにフランは相手の腕を枕にしていたらしい。

「え? え?」

 寝乱れたナイトガウンの襟元から、男性の逞しい鎖骨と喉のラインを見てとって、フランはカァッと頬を熱くした。
 硬直したまま、いったいなにが起きているのかと目を白黒させる。
 そっと視線を上にずらせば、彫像のように芸術的な、高貴な男性の顔が目に飛び込んできた。

「へ……陛下!?」
「ん……」

 眠りを邪魔され、うるさそうに眉間の皺を深くした皇帝ライズの、金色の長いまつげがかすかに揺れる。

(うそっ!? 陛下と一緒に眠っていたなんて、どうして……)