振り返れば、カーネリアを筆頭とする令嬢軍団が、奥にあるサロンからぞろぞろと出てくるところだった。中にはブルーネル、コーラルの姿もある。
 彼女らの目つきには、相変わらず棘があった。ハンカチを見られないよう隠しながら、差し障りのない返事を探して答える。

「あの、部屋が汚れてきたので、お掃除するための道具をお借りしたいのです」
「ああ……そういえばあなた、侍女がいないものね。ウフフッ」
「惨めですわねぇ、下女のやる仕事まで自分でこなさないといけないなんて」
「いっそご自身が使用人になられてはいかがかしら。お似合いですわ」

 口々に嫌みを言われるも、ハンカチについては気づかれていないようで安心する。陛下から賜ったものと知られたら、取り上げられてしまうことは明白だ。
 早々にこの場を離れたかったが、やすやすと解放してはくれなかった。
 カーネリアたちは階段の縁までフランを追い詰め、詰問してくる。

「ところであなた、どうしてそんなに元気なのよ。すぐに出ていくかと思ったのに、どんなずるい手を使っているの? やっぱり陛下に取り入っているんでしょう!?」

 さまざまな嫌がらせを加えても、一向に折れないフランに苛立っているようだ。