あの日、可愛がってくれた相手は、本当にライズ本人だったのだろうかと、何度も記憶を掘り返してしまう。
 陛下は、本当は優しい人なのかもしれない。それとも、あの一面を見せるのは、人間以外の動物にだけ……?

 胸がトクンと高鳴る。秘密を知ってしまったような、甘い感覚。また味わいたいと心が疼いた。けれどピンク色の獣が実はフランが変身した姿だと知られたら、彼は怒ってフランの首をはねるだろう。

 幸か不幸か、あれから変身するような事態にはなっていない。フランの境遇を見かねたサリーがこっそりと食事を届けてくれるようになり、当面の餓死の危機は脱したのだ。

 引き続き、姫たちの怒りに油を注がないよう、気をつけなければならない。
 しかしながら、獣の姿の自分がライズからどう思われているかがどうにも気にかかった。
 食べ物をもらい、通行証代わりのハンカチまで結んでもらったのに、二度と姿を見せないなんて、恩知らずだと思われていないだろうか。