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 大失敗の会食のあと、フランは重い足を引きずるようにして花離宮へ戻ってきた。

(うぅ、とても疲れたわ……。サリーに話を聞いてもらって、今日は早く休みたい……)

 だが、エントランスに入ってすぐ、足を止めざるを得ない状況が待ち構えていた。
 ぞっとする視線を感じて見上げると、螺旋階段の上から向けられているのは、険しく吊り上がった複数の目。
 射殺さんとばかりにギラギラとした目つきで睨みつけられ、その場に竦み上がった。

「シャムールの王女。待っていたわよ」
「は、はい……。あの……?」

 カーネリアとその取り巻きたちが、滑るように階段を下り、詰め寄ってくる。思わず後ずさりしかけたが、あっという間に人垣に囲まれ、退路も塞がれてしまった。
 金属をかき鳴らすような声で、カーネリアが言った。

「さっきのはどういうこと!? 新人の、泥臭い田舎の王女風情が、皇帝陛下に声をかけられるなんて! いったいどんな手を使ったのよ!?」
「ご、誤解です。私はなにも……」