そうして儀式を終えたふたりは、お披露目の場に向かって移動を始める。フランはライズの肘にそっと手を添え、ライズはフランに歩幅を合わせて大廊下を進んだ。
 ウェディングドレスに散りばめられた一万個にも及ぶクリスタルがきらきらと光を反射し、精巧な刺繍が施された裾広がりの長いトレーンが優雅にあとを引く。

 やがてふたりがバルコニーに出ると、そこには圧倒される光景が広がっていた。目下の広大なスペースを帝国の民が埋め尽くし、朗らかな笑顔をこちらに向けている。
 歴史に残るであろう盛大なロイヤルウェディング。国の象徴たる新郎新婦を、大きな拍手と歓声が包んだ。
 感激のあまり立ち尽くすフランをライズが抱き寄せ、音の洪水の中でも聞こえるよう、耳元に口を寄せて言う。

「フラン……愛している。我が帝国に来てくれて、ありがとう」

 祝福の白い鳩が、天高く飛び立った。