(そういえば……)

 指輪を賜った際に、ライズから言われた言葉を思い出した。
 この宝石はマナの力を宿した貴重なもので、もしも危険が迫ったとき、フランの身を守ってくれると――。
 すると森の奥から、鋭い一声が届いた。

「加護の力は一度しか使えないのだが、まさか贈ったその日に役立つとは……」

 その声に、ベラがハッとして振り返る。
 三人が見つめる先から夜の闇を掻き分けるようにして現れたのは、静かな怒りを瞳にたぎらせたライズだった。

「ライズ様……!」

 ベラの横を駆け抜け、飛びついてきたフランを、ライズが抱きとめる。力強い腕が背に回され、安心が身を包んだ。

「フラン、大丈夫か?」
「はい……ライズ様。ありがとうございます」

 視線を交わしてフランの無事を確認したライズとともに、フランはシャムール王妃とその騎士に向き直った。
 ライズの鋭い眼光を受けて、王妃らはびくりと肩を震わせる。その威圧感は、フランにもビシビシと伝わってきた。常に隙がなく厳しいところがある彼だが、ここまで怒っているのを見るのは初めてだ。