誰だろうと思って振り向けば、懐かしい顔ぶれの三人がこちらに向かってくる。フランは目を見開いて、彼らに向き直った。

「お、お父様、お母様……それにマーガレットも!」

 シャムールにいるはずの、フランの家族だった。
 招待客は国内貴族だけでなく友好関係にある各国からも広く集めたと聞いてはいたが、遠い島から家族を呼び寄せてくれていたとは知らなかった。
 けれど数か月ぶりに顔を合わせた家族は、どこか戸惑っているように見える。それはフランも同じで、嬉しさと気まずさを合わせたような気持ちになりながら彼らのそばへと駆け寄った。

「フラン、元気そうじゃないか。なんだか以前よりも……」

 帝国に統治権を残してもらい、現在もシャムール国王であるはずの父バウム。偉大だと思っていた父は、フランの頭の先から足元まで眺めながら、不自然に言葉を途切れさせた。どうやらフランが身に着けている豪華なドレスに目を奪われているようだ。
 父の横に立つ母のベラも、心底驚いた様子で細い眉を吊り上げている。