祭事の準備に関する彼らの相談は続いていたが、フランはいつの間にか心ここにあらずの状態になっていた。

「ねぇ、フランさん」
「――は、はいっ?」

 唐突に声をかけられて、ハッとする。大事な話も、もしや聞き逃してしまったかもしれない。
 慌てて顔を上げたフランに、皇太后がにっこりと笑って話しかけた。

「話は変わるのだけど……今度わたくしにも、噂の聖獣とやらの姿を見せてくれないかしら」
「え……えぇっ!?」

 予想もしていなかった依頼に、椅子に腰かけた姿勢のまま仰け反った。

(こっ!? 皇太后様に、変身した姿を……!?)

「ね、いいでしょう? 小さくて温かくて、それはもう極上の手触りと愛らしさで――愛しくてたまらない、だなんてライズが自慢げに言うものだから……」

 急にライズがゴホンゴホンと咳をしだし、後半部分の音がかき消された。喉の調子でも悪いのだろうかと彼のことも気にかけつつ、皇太后に意識を戻す。

「あ、ええと、そのですね……」