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 それから数日が経ってもなお、恐縮してしまうほど丁重に扱われる日々が続いた。
 忙しいはずのライズがわざわざ時間を空け、食事に誘ってくれる。顔を合わせれば笑いかけてくれるし、困っていることはないかと常に気を遣ってくれている。
 信じられないほど平和で幸福な時間が続いて、このまま頬が緩んでしまったらどうしよう、太ってしまったらどうしようなどと変な心配をしてしまう。

 体調も良好となってきたある日、フランはライズに呼ばれて城の一室へと向かっていた。皇太后がフランと話をしたいと望んでいるのだという。
 緊張した面持ちで重厚な扉を開くと、豪華な皇族専用の談話スペースに、ライズと皇太后、そして穏やかな笑みを浮かべたルークの姿があった。

「ルーク殿下……! あっ、失礼をいたしました。皇帝陛下、皇太后様ならびに皇弟殿下にご挨拶を申し上げます」
「そんなにかしこまらなくていいわ。それより早くこちらにいらっしゃい」

 ソファに腰かけた皇太后が、優雅な手つきで手招きをしている。
 戸惑ってライズのほうに視線を向けると、大丈夫だという頷きが返ってきた。ひとまず気持ちを落ち着けたフランは、部屋の中ほどへと歩みを進める。