あくる日には、フラン付きの侍女であるサリーも皇妃の部屋に呼び寄せられた。
 まずは現状の報告、そしてライズと再び歩み寄れたことを伝えると、常に心強い味方でいてくれる彼女は飛び上がって喜んでくれる。
 けれども和やかな気持ちでいられたのは束の間。すぐに顔から火が出る勢いで、羞恥に身を悶えさせることになった。

「フラン様、今日のお召し物は首元が隠れるものにしたほうがよろしいですよね。陛下の寵愛を周囲に知らしめたくも思いますが、少々目のやり場が……」

 頬を赤らめたサリーが、妙な笑顔を浮かべながらチラチラとこちらを見ている。
 慌てて鏡を見ると、首元に昨夜の触れ合いの名残がはっきりと残されていた。

「う、嘘……!?」

 それがキス・マークだということは明白だった。
 ということは、これを目にした相手は当然、ふたりの間になにがあったかを察し、想像したりもするわけで。

(昨日はあのあと、お医者様から診察を受けて、それからクリムトさんともお話を……)

 彼らが痕に気づかなかったわけがない。思い起こせばふたりとも、なにやらぎこちない微笑みを浮かべていたような――。
 ボッと顔を真っ赤に染めたフランは、その後しばらく行動不能に陥った。