厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています

 建物の中に入り、奥の部屋に進むと、ルークはベッドの上で意識を失っていた。

「殿下……!」

 顔色は土気色で、呼吸が浅く細い。命の灯火が消えかけていることがわかる。やはり先ほどのクリムトの行動は、ルークの急変を知らせに走ったものだったのだ。

「しっかりしてください、ルーク殿下……!」

 駆け寄って声をかけると、彼は端正な顔を歪ませ身じろいだ。胸が苦しいのか、心臓のあたりを押さえて苦痛に耐えている様子だ。
 このまま死なせたくない。せめて最期に、兄と母に会いたいと言っていたルークの願いを叶えてあげたかった。
 知らせを受けたライズは来てくれるだろうか。けれどそれまで彼の命は持たないかもしれない。

 迷っている暇はなかった。ベッドの傍らに膝をつき、ルークの体に手をかざす。
 なんとか手助けができればと、その一心で癒やしの力を発動した。以前にこっそり試したときは事足りなかったが、今度こそはと力を振り絞る。