初対面で脅かされ、拒絶されて傷つかないわけがない。
 短時間のうちにひどく消耗させられ、なんだか心が擦り切れた気がする。

 気持ちが弱るのとはまた違うから、衆人環視の前で変身してしまうようなことにはならなかったが……。
 もし、あの場で獣の耳や尻尾を出してしまっていたら、どうなっていただろう。
 紛い物を差し出したと激怒しただろうか。それとも、希少となった獣人を珍しがって見世物にでもしただろうか。

 どちらにせよ、皇帝の凍るような視線を思い出すと全身が震え上がってしまう。
 脳裏に焼きついた恐怖の欠片を振り払おうとしていると、

「あの……王女様。ご体調が優れませんか?」

 編んでまとめた焦げ茶色の髪、頬にそばかすのある侍女が、心配げにこちらを覗き込んでいる。

「あっ、ごめんなさい。ちょっと混乱していて……」
「長旅でお疲れでいらっしゃいますよね。それでは早速、花離宮のお部屋にご案内いたします」
「はい、よろしくお願いします」