そのままぎゅっと抱きしめられて、逞しい胸に頬を押しつけた。彼の体温といい匂いに包まれて、深く息を吸う。
 十分満喫してから身を離し、身なりを整えるまで待ってもらった。
 服を身に着けてから応接スペースにいるライズの前に戻ると、彼のほうは外出着のままの格好で、外から戻ってすぐに会いにきてくれたのだとわかった。
 戻りは明日だと聞いていたのだが、一日早まったらしい。小離宮にいたフランは先触れに気づかず、出迎えの機を逸してしまったのだ。

「お迎えに駆けつけられず、申し訳ありませんでした……」
「構わない。だが、今までどこへ行っていたんだ?」
「ええと……」

 心の準備が整っておらず、視線が揺れてしまう。ライズが怪訝そうな顔をした。
 慎重に進めなければいけない話だ。けれど、今を逃せば、またしばらくふたりきりで話せる機会はないかもしれない。
 意を決し、ルークと偶然に知り合ったこと、そして今日も小離宮で会っていたことを、包み隠さず話した。